シミについて(診断・治療法)

2011-05-30

はじめに

癌の再建外科ばかりしていた私がシミの治療に興味を持ち始めたのは15年前でした。その頃はシミの治療というとレーザーばかりだったのですが、トレチノインというビタミンA1の誘導体によるスキンケアで劇的にシミが良くなった患者さんを見て、まだ混沌としていたシミの治療法を自分なりに10年以上かけて積み上げていきました(未だ混沌としていますが・・・)。私の治療法は東大形成外科の吉村浩太郎先生に近いですが、シミの基本的な考え方は葛西形成外科の葛西健一郎先生を師事しています。
 

1)シミと化粧品

シミについてはエステや化粧品や民間療法などで色々な情報が溢れていますが、その情報には誤っているものが非常に多く見られます。

『新化粧品学』 資生堂研究開発本部長 光井武夫著より

現在薬事法で明らかな事は、化粧品も医薬部外品も医薬品とは異なり、健常人を対象として人体を清潔に保つとういう衛生的な面と美しく装うということがその目的であって、医薬品のように治療、診断、予防といった身体の構造、機能に影響を及ぼすような目的ではなく、したがって生理的な作用が緩和なものとされている。

簡単に言えば、化粧品はシミの治療には効果はないと薬事法で規定されているということです。したがって、どんなに高い価格のものであっても化粧品として売られていれば、シミへの効果は期待できないということです。

エステも医療機関ではないので、上記と同様に医師法で規定されているため、シミを治療するような施術などはできないのです。もちろん医療にはないようなリラックスできるような施術やアロマセラピーなど利点もありますが、治療するところではないということです。

つまりシミの治療ができるのは医療機関だけであり、シミ治療に精通した皮膚科・形成外科医が常駐している施設を選ぶべきなのです。
 

2)シミの種類

シミとは皮膚の色素の局所的な増量です。顔面皮膚の不均等さが、

シミがあるということになりますが、それには様々なパターンがあります。

シミはいくつかの全く異なる性質の疾患の組み合わせであるため、

一人のシミ患者さんを診察した場合、どの部位がどの疾患であるかを

確実に判断して、それぞれに対する治療法を考えながら組み立てて

いくことが重要です。

 

シミは現在、大きく分けて5つに分類されています。

    1.老人性色素斑・脂漏性角化症

    2.肝斑

    3.そばかす(雀卵斑)

    4.炎症性色素沈着

    5.後天性メラノサイトーシス

 

老人性色素斑・脂漏性角化症

老人性色素斑は、顔面に現れるシミの中でも最もありふれたものです。不定形の色素班で大きさも様々ですが、ゆっくりと拡大する傾向があり、色調もだんだんと濃くなることが多いです。顔の正面よりも側面に発生することが多いようです。平坦なものですが、脂漏性角化症の初期の状態とも考えられています。

老人性色素班が厚みを増して、いぼ状に盛り上がったものを脂漏性角化症(老人性イボ)と呼びます。

両者は、病理組織学からも同一疾患と考えられています。症状の変動はあまりありませんが、日焼けにより色は濃くなります。


治療は

老人性色素斑で、単発で比較的濃いシミであれば、Qスイッチルビーレーザーを第1選択とします。しかし顔面全体にシミが多発しているような場合(実際にはこのケースが多い)には、トレチノイン・ハイドロキノンによるスキンケアが有効です。シミが非常に薄く、くすみがメインの場合には(20~30代に多い)光治療を行う場合もあります。当院では、スキンケアによるシミ治療が7割を占め、これがクリニックの特徴となっています。

脂漏性角化症(老人性イボ)の場合は、イボの厚みがある場合には、高周波メスで焼灼することが最も多く、薄い場合にはQスイッチルビーレーザーを行います。表皮が腫瘍性に変化したところのみを削るため、処置後は平坦になります。


肝 斑

16歳以上に発症する後天性の顔面色素斑で、左右対称に目の下の頬、眉の上(額)、鼻の下などの口の周りに、ぼんやりとあるいはべったりとでてくる薄茶色のシミ。多いのは、左右対称に目の下に出てきます。レバーのような色調をするため肝斑という名前がついていますが、肝臓が悪くて出てくるのではありません。病状に変動があり、女性に多いシミです。

 妊娠、分娩、閉経、経口避妊薬の投与などをきっかけに出てくるので、女性ホルモンとの関係が言われており、紫外線をあびると濃くなったり、疲れ、ストレスや睡眠不足で濃くなり、ホルモン以外の要因も関係すると従来は考えられていました。そのため、肝斑そのものの根本原因は未だにはっきりせずいろいろな治療法が開発されていますが、効果にばらつきが多く治療は、混乱していました。

しかし近年、新しい考え方として、肝斑の病態は『慢性過刺激(こすりすぎ)』による表皮バリアの破壊が原因ではないかと、シミの大家:葛西健一郎先生が発表しました。その証明として肝斑の発症年齢はみごとに「化粧をする」年代と一致していることがあげられます。葛西先生は、肝斑の治療法と効果についても客観的に評価しており、当クリニックはその評価に基づいて治療法を組み立てています。

治療法はトラネキサム酸内服(トランサミン)が第1選択です。それに加えて保存療法を指導します。とにかく肌をこすり過ぎないように指導して、状態が落ち着くまで、マッサージ・パック・エステなどの肌に刺激を加えることを避けるようにします。レーザー治療は基本的に禁忌です。

最近Qスイッチヤグレーザーのレーザーニング(弱いパワーで照射)が有効とも言われていますが、まだ効果に対する正確な評価はされていません。光治療も同様です。要するに効果が安定していないとういうことです。

人性色素班と肝斑が重なって合併している場合には(実はこれが多い)、トラネキサム酸内服と長期間・低濃度のトレチノイン・ハイドロキノン治療が有効です。
 

そばかす(雀斑斑)

3歳以降に発症する顔面色素斑。1~5mm大の色素斑がほぼ均等に並んで、下眼瞼~頬から鼻根部を中心として、場合により上眼瞼・額・口周囲にまで及びます。女性に多く、思春期に目立つようになり、中高年では目立たなくなり、妊娠時に増悪します。日焼けは明らかな増悪因子です。レーザー・光治療などによく反応しますが、長期的には再発することが多いので、追加治療を必要とする場合がしばしば見られます。光治療(スーパーフォト)は、徐々に治療効果が出てくるため、数回の治療を必要としますが、ダウンタイムがありません。レーザー治療はQスイッチYAGレーザーでほぼ顔面全体を低出力で照射します。治療効果は高いのですが、薄いかさぶたが取れるまで数日かかりますので、ダウンタイムを考慮しなければなりません。
 

炎症性色素沈着

外傷・熱傷などの皮膚の損傷が治癒した後に起こる皮膚の色素沈着です。色素沈着の程度は外傷の程度・部位・炎症期間などによって左右されます。その本質は一過性の生体反応による色素沈着です。時間とともに自然治癒します。シミのレーザー治療や各種皮膚科処置(液体窒素など)の後にも色素沈着はしばしば認められます。

特にレーザー治療後かさぶたが取れて肌色になった後、2週間ぐらいして起こる色素沈着は、、シミの再発ではなく、炎症性色素沈着です。その場合4~5週で最も濃くなることが多いですが、3~6ヶ月でうすくなってきます。。

トレチノイン・ハイドロキノン治療及びトラネキサム酸内服が有効です。


後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)

13歳以上(多くは20歳以上)に初発する顔面色素斑で、顔面の頬骨部・こめかみ部・鼻翼部・眼瞼部・前額部に両側性に灰褐色の色素斑を示します。遅発性両側性大田母斑様色素班とも言います。(片側性の部分があってもよい)ADMの本質は遅発性の『母斑』と考えられます。したがって、当院ではシミの中で唯一、処置を保険診療で行うことのできるシミです。(2回レーザー治療まで)

35回のQスイッチルビーレーザー治療が有効ですが、炎症性色素沈着を起こすことが多いため、比較的長期の治療が必要です。

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