ボトックスについて

2011-10-21

ボツリヌストキシンによる美容的な治療は、2002年に米国FDAによりボトックス(商品名)による眉間のしわの治療が許可されて以来急速に普及して、今や美容医学における代表的な非手術療法の1つとなっています。日本では、2009年に(株)アラガン・ジャパンからボトックスビスタが成人の眉間のしわの治療に対し厚生労働省から認可され、広く使われるようになりました。現在70カ国以上で承認されています。

今回はボツリヌストキシン(毒素)の作用について説明したいと思います。

 

ボツリヌス毒素は、グラム陽性偏性嫌気性桿菌であるボツリヌス菌によって産生される毒素です。この毒素は抗原性により7種類(A~G型)に分類されています。自然界に7種類あるボツリヌス毒素のうちA型が最も毒性が強く安定しているとされています。このボツリヌス毒素を米国のScottが1977年に初めて斜視に対して臨床応用し、その後、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮および小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足の治療にも用いられるようになりました。

ボツリヌス毒素製剤の作用は神経筋接合部で神経終末に作用し、アセチルコリンの放出を抑制します。これにより、アセチルコリンを介した筋収縮が阻害され、筋の攣縮および緊張を改善します。

下記に実際の効果のわかりやすく、作用についての図式を示します。

したがって、筋肉を動かすことによって出来るしわに効果があるのです。

数々のボツリヌストキシン製剤がありますが、美容医療市場ではボトックスとディスポートが大多数のシェアを占めています。ボトックスは国によって美容適応に対して名前を使い分けていて日本ではボトックスビスタとして販売されています。中国製・韓国製などの廉価なボツリヌストキシン製剤もありますが、美容領域での効果に関するデータは十分でなく厚生労働省の認可もないため、横浜すずきクリニックでは、ボトックスビスタのみを採用しています

 

表情しわと顔面の筋肉

人が顔をしかめたり、あるいは、気持ちを集中させたりしているときに、眉と眉の間に縦ジワが寄っているのに気づいたことはありますか?こうした眉間のシワは、通常、顔の表情を作ったときだけ、目にすることができます。しかし、長期にわたって、「皺眉筋」が繰り返し動くことによって、こうしたシワが顔の表情を作っていないときですら、はっきりと目立つようになる場合がありますこうした眉間のシワは、怒っているような印象や疲れた印象、あるいは、まったく嫌な気分でないときでさえいらいらしているような印象を与える場合があります。

このように表情しわは、感情表現の一つであり、人と人とのコミュニケーションにとって基本的なものです。それには顔面の表情筋が関係してきます。表情の変化によるしわに関連する筋肉を下の図に示します。

 

これらの筋肉の動きを止めるのが基本的にボトックス治療になりますが、現在では特定の部位にでは注入手技だけでなく、投与量も変化させて、なるべく自然な表情に近くなるようにしています。

『無表情に見える』ということがないように注入技術も進歩しているのです。

 

 

1.眉間のしわ

眉間のしわは、鼻根筋・眉毛下制筋・皺眉筋の3つの筋肉によって作られます。

ボトックスはこれらの筋肉を動かなくさせることによって、眉間の縦じわ・横じわを改善させます。

良い適応は、皮膚が柔らかく表情が豊かで、筋肉の動きが良好もしくは過剰な患者さんに有効です。筋肉を緩めた状態でも眉間に皺がある場合には、ヒアルロン酸などのフィラーを追加する場合もあります。

注入の実際

ボトックスを注入する部位に、針の痛みをなるべく少なくするために麻酔クリームを塗って、約30分別室で待って頂きます。次に注入ルームに入っていただき、麻酔クリームを拭き取りマーキングをします。ボトックス治療の注射部位は下記のように基本的に5か所です

ボトックスの効果は注入後約48時間で現れ、4~6カ月持続します。

当日から洗顔可能です。

(注意:注射部位をマッサージしないでください。)

副作用:眼瞼下垂(まぶたが下る)、眉毛の外側の挙上

     頭痛、注射部位の局所的な痛みなど

 

2.その他、顔面部位別の注入について

a) 前額部(おでこのしわ)

  年齢を重ねると、特に男性はおでこに深い横皺が出現してきます。女性はおでこの丸みがあるため目立ちにくいのですが、眉を挙げるくせ のあるひとは、横に何本かの皺が出現します。これらの横皺に対して、ボトックス治療により前額筋の力を弱めることで皺を著明に改善することができ非常に良い適応です。

  眼瞼下垂の認められる人はボトックス治療は不適です。

 

b) 目尻(カラスの足跡) 

  目尻のしわも 効果がはっきり出易くボトックス治療の良い適応です。

  下瞼の目袋が目立つ人はボトックス治療は不適です。

c) 鼻のしわ(バニーライン)

  眉間のしわと同時にボトックス治療をすることがあります。

d) 敷石状おとがい(下顎のうめぼし)

  下顎のうめぼし状のしわにもボトックス治療は効果があります。

 

3.形態の改善(肥大した筋肉の減量)・機能改善(エクリン汗腺の抑制)

ボトックスを注射すると、局所の末梢神経からの命令が筋肉や汗腺などの組織や器官に伝わりにくくなり、結果として一部の筋肉や汗腺が働かなくなります。この性質を利用して、額や眉間、目尻の表情筋によるシワの治療や、ワキ、手掌、足底の多汗症の治療、エラの部分の咬筋を萎縮させてすっきり小顔にする治療などに用いられます

a)咬筋(下顎のエラ)

下顎のエラは、骨の突出と咬む筋肉・咬筋の肥大が原因となります。骨の突出の改善には効果はありませんが、咬筋が発達している人にはボトックス治療が有効です。筋肉にボトックスを注入することにより、筋力が弱まり筋が萎縮するので、小顔になります。通常注射後2~4週頃から効果が出始めて3カ月で最も効果が認められます。治療効果は約10カ月です。

治療前

治療後3カ月

 

b)ふくらはぎ

ふくらはぎを細くする目的で行います。下腿の筋肉は強いので運動を控えたり、間隔を短めにボトックス治療をする必要があります。

c)機能改善(多汗症の治療)

ボトックスが主にエクリン汗腺からの汗を抑えることを利用して、ワキや手のひらの多汗症の治療にも応用されています。手のひらへの施術はやや痛みが強いようです。効果持続はおおよそ4~5カ月です。

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